白虎隊
TOP
⇒
前篇
TOP
⇒
前篇 其の4 @
◆其の四 修羅の地に集う者たち
@
新撰組を配下に加えた会津藩は薩摩藩と手を組み、
倒幕派の急先鋒・長州藩に先手を打つ。
-----------------------------------------------
かくして、会津中将・松平容保率いる
藩兵一千名は、風雲急を告げる、京の都へ旅立つ事になった。
「間瀬岩五郎(ませ いわごろう)」
「男はそなた一人になる。 頼むぞ」
(岩五郎)
会津藩士・間瀬岩五郎。
彼の弟
「間瀬源七郎(ませ げんしちろう)」
(手前)が、後に白虎隊隊員となる。
「きよ / ゆき」
「兄様。 姉様を泣かせてはなりませぬぞ」
(きよ)
妹のきよの物言いは、多分に浮気を含んでいると思われる。
「色々と心配は尽きませぬ」
(ゆき)
ゆきはほんとに身体を気遣ってのことだろうが、浮気もちょっと含まれてると思われる。
そんな岩五郎は「要らぬ心配じゃ」と頼もしい。
↑
「まつ」
その岩五郎の母、まつの目線の先には、陣屋から出てきた井上家の面々が。
「いやいやいや、みんな達者でのう。頑張ってくだんせー。
京の女子にうつつを抜かすでねえぞ。女房子供が待って居りまするぞ。良いのォ!」
(丘隅)
京へと向かう藩士たちに声を掛ける丘隅。
とそこへ、またまたテンポ良く、絶妙なタイミングで生徒たちが。
「せんせーい!」
(生徒)
「はっはっはっはっ。 お主らの父御
(ててご)
も参るのか!」
(丘隅)
「篠田兵庫(しのだ ひょうご)」
「丘隅殿!儀三郎めが怠けましたら叱ってやってくだされ!」
(兵庫)
兵庫の脇にいる少年が、後の白虎隊副隊長
「篠田儀三郎(しのだ ぎさぶろう)」
。
父ちゃん余計なこと言うなよ。 と、思ったとか思わなかったとか。
「旦那様、雪子様たちが」
(七兵衛)
TVならではのこのテンポ。
「姉様!どこから見ても、お似合いの夫婦
(めおと)
ですよ!」
(ゆみ子)
「生意気!いーだ!」
(雪子)
ストレートに茶化すゆみ子に、小学生並みの返しを見せるお茶目な雪子。
どうやら子供っぽさを演出したいようだ。
「何ですか、はしたない。家老職の神保様の
嫁御が。道中、修理殿にご迷惑を掛けてはなりませんよ!」
(とめ子)
とめ子はしつけに細かいようだが、嫌味のない言い方に好感。
「江戸からは姉様たちも一緒ですし、心配要りません」
(雪子)
どうやら左兵衛・ちか子夫婦も京へ向かうとのこと。 井上家にとっては一大事だ。
こちらは山本家の様子。
「尚さん、八重子の事は宜しく頼む。
些かじゃじゃ馬じゃがのォ、情は濃い方じゃ」
(角馬)
他にも「教授方に推挙しといた」と、尚之助に至れり尽くせりの覚馬。
「いやァ、何から何までかたじけない」
(尚之助)
甘える尚さん。
「山本三郎(やまもと さぶろう)」
「三郎、山本の家は代々砲術指南の家柄。
こと砲術に関しては、誰にも負けてはなりませぬ!良いの!」
(八重子)
些かどころか、かなりじゃじゃ馬っぽい八重子。
「だったら姉上が行けばいいでしょ。 剣術でも鉄砲でも、姉上の方が私より上なんだから」
(三郎)
「情けない事を言うな!男のくせに!」
(八重子)
「お陰で私は家中の笑い者ですよ。 お前は
姉上がおっ母さんの腹の中に忘れてきた物を拾ってきたんだ、って」
(三郎)
「何ですかァ、それは ??」
(八重子)
思わず吹き出す二人。 しとやかさってこと?
尚之助を見て
「あ‥」
と察した八重子は、恥ずかしそうに
「三郎の馬鹿者ォ!」
。
「国難じゃァ‥これは、もはや国難より他に言い様が無い。
一人でも欠ける事無く、帰ってくれれば良いが」
(丘隅)
「瀧澤峠 御城下
江
一里」
とある。
故郷を胸に、国境を越えていざ京都へ。
会津藩士の一行が、京都守護の本陣に定められた黒谷の金戒光明寺
(きんかい こうみょうじ)
に
到着したのは、その年の暮れ、文久二年 十二月二十四日であった。
その頃、会津藩士を迎えた京の都は、果たして、どのような様相を呈していたのか。
文久二年、七月二十日。 九条家要人、島田左近
(しまだ さこん)
暗殺。
年号が、「文久」から「暗殺」に変わったとしか思えぬ程、京の都は、殺戮の町と化していた。
維新の胎動が、未だ一つの勢力に成り得ぬ混乱期。
攘夷派浪士のエネルギーは、凄まじいばかりであった。
そしてここに、会津藩にとっては恰好の援軍が現れる。
浪士には浪士を以てと、幕府が募集した、浪士隊の面々であった。
ところが、京都に着くや、この浪士隊の生みの親であり、
隊長格の庄内藩浪士、清河八郎が。
「清河八郎(きよかわ はちろう)」
「聴けーい!我らが京へ上った真の目的は!将軍上洛の守護にあらず!
その真実は!尊皇攘夷の先鋒足らんとする事にあり!」
(清河)
もともと尊皇攘夷に傾倒していた清河は、幕府を出し抜いて浪士組を結成。
25歳で私塾を開いた秀才であったとのこと。
「御一同!元より異存御座らんな‥」
(清河)
とても若くは見えない清川が手の内を明かして同意を促すが、強制採決に近い。
当然場はどよめき出す。 すると‥
「近藤勇(こんどう いさみ)」
「我らはあくまで幕府の募集に応じたもの。将軍家の
御沙汰もあれば攘夷も結構だが、貴公の指図に従う気は無い」
(近藤)
のちの新選組局長「近藤勇」登場。 スッと立ち上がり、清河に対し異を唱える。
「それで?」
(清河)
「土方歳三(ひじかた としぞう)」
「近藤さん、出よう」
(土方)
「ああ」
(近藤)
「鬼の副長」の異名を取り、攘夷派に恐れられたのちの新選組副長「土方歳三」。
話にもなんねえなといった風に、投げやりな態度を見せる。
「待たれよ! ‥貴様ら、幕府の走狗となるのか!」
(清河)
「己こそ、犬に化けた狐か?」
(土方)
売り言葉に買い言葉で返した上に、なかなかうまいこと言った土方。
「おのれえ!」
(浪士)
逆上した隻眼の浪士が、突然いきり立って近藤・土方に斬りかかる。
そこへ、素早い動きで割って入る若い剣士。
「沖田総司(おきた そうじ)」
「うああー!」
(浪士)
後の新選組一番隊隊長「沖田総司」。
出だしからいきなり抜刀し、浪士の腕をぶった斬る。
「総司、狐なんか斬ったら刀が穢れるぞ。 行こう」
(土方)
ここで、近藤・土方派と見られる浪士たちは、ゾロゾロと部屋を後にする。
本来、この時点ではまだいるはずの
「芹沢鴨(せりざわ かも)」
は出てこない。 話早くていいけど。
その出て行く浪士たちを目で追う、先ほどから様子を窺っていた身なりの整った武士。
「佐々木只三郎(ささき たださぶろう)」
この男、直参旗本七百石、佐々木只三郎と言う。 会津藩公用方
「手代木 直右衛門」の実弟で、後に見廻組を組織して新選組と張り合う事になる。
坂本龍馬暗殺の最有力ともされる「京都見廻組」予頭、剣豪・佐々木只三郎登場。
京都見廻組は会津傘下ではなく幕臣。
その只三郎は近藤・土方を連れ、会津藩の公邸らしき所を訪れる。
清河と決別したさっきの件は既に打ち合わせ済みだったのか。
「手代木直右衛門(てしろぎ すぐうえもん)」
「近藤君は、多摩の生まれと聞いたが」
(直右衛門)
左兵衛を含む会津公用方に謁見する近藤と土方。 手代木は「たしろぎ」とも読むようだ。
「生まれは、上石原の百姓です」
(近藤)
上石原は現在の調布にある味の素スタジアム辺り。 同名の交差点がある。が、調べたら今と昔、場所が違うらしい。
ちなみに土方の出身日野市には資料館がある。 現在はなかなかいい街のように思う。
「生半可な侍なんかには負けませんよ」
(土方)
地元・多摩の剣脈の郷士を知る野村左兵衛にえらく感動し、軽口を叩く二人。
会話中「八王子千人同心」と出てくるが、こちらも武士ではなく郷士身分。
「おいおい、そう、ホラを吹くなよ」
(近藤)
「あ‥京へ来ると、どうも話が大袈裟になっていけませんな」
(土方)
「っはっはっは!お互い、田舎者だからな」
(近藤)
「如何にも」
(土方)
「はっはっはっは!」
この会話を聞き、二人に好感を持った様子の左兵衛。
この者たちならば大丈夫だ、といった表情だ。
「腕が立つのは良いが、破落戸
(ごろつき)
まがいでは会津の名に傷が付く」
(土佐)
「秋月悌次郎(あきづき ていじろう)」
「浪士の取り締まりに、浪士を雇うのは如何なものやら」
(秋月)
のちの【八月十八日の政変】と呼ばれる朝廷内のクーデターで優秀な働きを見せる秋月悌次郎が登場。
田中土佐共々、浪士隊(後の新選組)の採用に疑問を投げかける。
(ゴロツキって言葉が昔からあったのに驚いた)
「これが、公然たる戦ならいざ知らず、素性も判らぬ
暴徒を鎮圧するのに、何の遠慮や気兼ねが要りましょうや」
(左兵衛)
この超強気の意見が痛快極まりない。
「修理殿は如何思われる。 やはり、身分にこだわりまするか」
(左兵衛)
左兵衛は、続けて劇中藩一の開明派とされる神保修理に意見を振る。
「いや、身分などより、思想が問題かと思います」
(修理)
一風変わったコメントをする修理。
「長州や土佐
(土佐藩)
を動かす攘夷派の中にも、郷士や、下級藩士は沢山います」
(修理)
「事を荒立てるのは余り好まぬが、これ以上王城の地を暴徒の為すがままに放っては置けん」
(容保)
容保は浪士隊を「公用方預かりにせよ」と、正式採用を認めて公用方に一任。
一方で修理は「西国諸藩の反発を買うのが厄介」と、暴走を恐れてよくよく慎重に扱うよう左兵衛に念を押す。
会津藩の中で数少ない、藩政のバランス感覚に優れた家臣の位置づけであることを窺わせる。
兎にも角にも、晴れて守護職預かりとなった近藤勇とその一党は、
その名も、新選組と改めて、動乱の巷に颯爽と登場する。
そしてこの頃から、不穏な噂が京の町に乱れ飛んだ。
↓不正分子とみなされ、新選組によって連行される攘夷派浪士。
「ええーい!今に見てろ!徳川二百数十年の圧政はもはやこれまでじゃ!」
「間もなく、我が同志は!畏くも帝を大和へお迎え奉り!」
「攘夷親征!倒幕のォ!義軍を起こし!錦の御旗を奉じて!江戸に攻め入る!」
(攘夷派浪士たち↑)
噂の出どころ発見。 自分たちで言ってた。 しかも結構具体的。
で、「はあ?」ってツラの京都市民。
こっちはこっちで「あの野郎、御託を並べやがる」「叩っ斬るか?」
などと会話する、随分おっかない新選組隊士。
「引かれ者の小唄ですよ」
(沖田)
要は負け惜しみだとバッサリ言い放つ沖田。
不穏分子をガンガン取り締まる浪士隊の採用は成功だったと言える。
-----------------------------------------------
※余談
沖田演じる故・中川勝彦氏の娘が「
中川翔子
」。
◆第一章 其の四 Aへ続く
白虎隊
TOP
┃
ドラマ概略
┃
前篇 時代背景
┃
後篇 時代背景
┃
参考資料
┃
Mailform
前篇 京都動乱
┃
後篇 落城の賦