白虎隊
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後篇
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後篇 其の3 @
◆其の三 武士
(もののふ)
たちの覚悟
@
鶴ヶ城に続々と馳せ参じる援軍たち。
その中には元新撰組副長・土方歳三の勇姿もあった。
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やがて、各地で西軍と戦ってきた幕府軍の残党達が、
最後の拠点を求めて続々と鶴ヶ城に集まってくる。
欧米か!プロシア人「エドワード・スネル」の設定。
彼は会津でかみさんをもらい、城下に屋敷も構えていた。
武器商人であり、会津藩軍事顧問。
「おーい! 援軍だ!援軍が来たぞ!新選組もいるッ」
(悌次郎)
彼は白虎隊士・伊東悌次郎。 訓練サボって何してるのかと。
「篠田儀三郎(しのだ ぎさぶろう)」
「新選組?」
(儀三郎)
この報告を受けた白虎隊副隊長・篠田儀三郎は、
即座に後ろを振り返って「おーい!」と隊士を招集する。
白虎隊の少年たちを狂喜させたのは、硝煙の匂いを漂わせて、
颯爽と入城してくる新選組の生き残り達であった。
「新選組だ!」
(源七郎)
「先頭に居られるのが、土方さんだッ」
(儀三郎)
京都にて凄まじい戦績を残した鬼の副長こと土方率いる新選組が会津へ入国。
鳥羽伏見後、宇都宮でも激戦を経ており、会津にとっては頼もしい味方だ。
しかし、残念ながら局長の近藤はすでに捕らえられてしまっている。
「新選組の方々ですかッ」
(駒四郎)
「土方さんですかッ」
(悌次郎)
「おお、君たちは」
(土方)
「土方歳三(ひじかた としぞう)」
「白虎隊ですッ!」
(儀三郎)
「白虎隊かァ、良い名前だ。 しっかりやれえッ」
(土方)
「はいッ!」
「おおッ!」
「やったァ!」
と口々に乱舞する白虎隊士。
土方と白虎隊の交流は、「松平善徳」福良出陣時の半月間。
幕末最強の剣客集団は、今で言うスーパーヒーローだったに違いない。
こちら、西郷頼母邸。
「のう、頼母殿。 婆が余計な事を言うと、そなたに叱られるかもしれぬが」
(律子)
ここで頼母の母、律子が登場。 前置きからあらかじめ防御線を張っておく。 というのも、
会津の十五家訓(かきん)には
「婦人女子の言葉は一切聞いてはならない」
という超保守な一文が存在する。
こういうのはなぜか表に出てこない。 頼母は気にせず「何なりと」と、のんびり茶をすする。
「律子(りつこ)」
「我が家の女達とて、皆、覚悟は出来て居ります」
(律子)
「母上‥」
(頼母)
恭順派である頼母の置かれた状況を理解し、まず結論から述べる律子。
頼母は表情を変える。 部屋の表には妻・千恵子の姿が。
「西郷頼母(さいごう たのも)」
「人が何と言おうと、母はそなたを信じて居ります。
ただ‥気掛かりなは、そなたが御家の大事に判断を誤りはせぬかと」
(頼母)
頼母は徹底抗戦が藩論を占める中で恭順論を説いて回ったため、腰抜け・卑怯者
呼ばわりされてしまう。「神保修理」同様、主戦派に命を狙われる危険がある中で、
律子は頼母が藩論に流され、心が折れはしまいかと心配したのだろう。
「千恵子(ちえこ)」
「家
(うち)
の事は何の心配も要りません。死すべき時は黙ってお行きなさい。
殊更に別れの挨拶などせずとも、顔を見れば分かります」
(律子)
それが武士の母であり、妻であると、頼母の背中を優しく押してやる律子。
「たれが妻子に後ろ髪引かれて、いくさ人としての進退を見誤ろうか!」(某ブログより抜粋)
ということか。 表の千恵子の頬を、一筋の涙が伝う。
「只今の母上のお言葉、頼母、何にも増して心強く、百万の味方を
得た思いで御座います。例えこの身が如何なる事になりましょうとも、
己の信ずるままに、武士の一念、貫き通してご覧に入れます」
(頼母)
とは言え、ここ数年は物騒だがそれまでは太平の世にあり、この先には避けられない
戦も予想される。 残される家族を思えば家庭を顧みるは必定。 それを振り払ってくれた
律子の言葉と千恵子の涙を踏み越え、頼母の武士道に火はともった。
頼母は「梶原平馬」たちになじられながらも、へり下った恭順歎願書を何枚も書いた。
戦争は避けなければならない。(ストーリーより)
この年の正月、鳥羽伏見の戦いで圧倒的な勝利を収めた、薩長を中心とする西軍は、
三月には江戸城を開城せしめ、更に勢いに乗じ、東北諸藩に会津征討の号令を発して、
奥羽街道を怒涛の如く進撃中であった。
奥羽鎮撫総督府参謀、世羅修蔵。
「世羅修蔵(せら しゅうぞう)」
官軍マーチに乗り、ここで奥羽の運命を決した人事と言われる、奥羽鎮撫総督
参謀「長州藩士・世羅修蔵」が満を持して登場。 この不敵な面構え、期待できる。
ちなみに前後篇とも、ナレーションでは3月に江戸開城と言ってるが、3月14日は
江戸無血開城が最終決定された日。 解釈によっては間違ってないが。
CEOが徳川から朝廷に替わり、本社新政府から東北出向の奥羽鎮撫総督。
東北に入った鎮撫使一行は、仙台藩始め東北諸藩から兵を出させ、会津包囲網を構築する。
「会津藩よりの、謝罪歎願書に御座いまする」
(但木)
「歎願書じゃとォ‥」
(世羅)
手前の彼が仙台藩士である但木土佐。 東北諸藩は鎮撫使に従って会津国境に兵を繰り出しつつも、
何とか戦争を避けようと戦う前に会津藩へ降伏を促し、和平への道を探っていた。 戦争は金がかかる。
結果、東北雄藩の仙台・米沢藩は会津と接近。 新政府との仲を取り持とうとした。
「今さらこねえな歎願書が通用すると思っちょるんか」
(世羅)
歎願書を渡された世羅は、中身を確認せずにジロジロみたあと、
バシッ!
「嘆願云々は半年前の話じゃッ」
(世羅)
おもいっきり歎願書を2人に向かって叩きつける。
「但木土佐(ただき とさ)」
「竹俣美作(たけまた みまさか)」
「しかし、奥羽鎮撫副総督の沢三位
(さんみ)
様より、
会津が降伏すれば征討の必要無しとのお言葉、賜っておりますッ」
(但木)
各地に派遣された鎮撫使は平安期の律令制度に則っており、支社長に公家が据えられた。
その下の参謀には西南雄藩の武士階級が任命されており、実質指導権はこちらにある。
といったわけで仙台・米沢の両藩は、本社役員から転がり落ちた旧徳川派閥の会津藩と
新たに本社の実権を握った薩長派閥との間に入って尽力するが。
「そねえな話は聴いとらん」
(世羅)
すっとぼけたツラで軽々一蹴。 記憶に御座いません。
「や、しかしッ‥」
(但木)
「会津が真降伏する積もりじゃったら、
何故容保の首を持って来んのじゃ!容保の首を見るまでは許さんッ」
(世羅)
刀を床に「ドン!」と叩きつけて、但木を威圧する世羅。
「それでは‥会津が納得致しませぬ」
(但木)
会津も必要以上の譲歩をしなかったため、仙台・米沢は苦境に立たされる。
そして、この言葉に世羅が激昂。
「何が納得じゃ!会津は奸賊じゃ!錦の御旗に逆らう‥逆賊ぞッ!
下手な庇い立てしちょると、その方達も容赦せんぞッ!」
(世羅)
まるでヤ○ザだ。 前篇とは立場が完全に逆になった会津と長州。 現場担当がここまで啖呵を
切るとはなかなかだが、さすがに世羅のこの物言いに2人も顔を上げて反発を示す。
「容赦せぬとは、些かお言葉が過ぎましょう。 どうしても
会津を討つと仰せあるなら、全奥州を敵に回す事になるやも知れませぬぞッ」
(但木)
「全奥州を敵に回す」 これは脅しではなく、この頃東北諸藩は戦争を避けるべく足並みを揃えており、
会津救済の歎願書に署名捺印をするにあたって各藩盟約を結んでいた。 しかし世羅は。
「何ならおんしから血祭りに上げちょるかッ!」
(世羅)
「何と申されるッ!」
(但木)
チャッ!
そんなこと屁とも思わない世羅の強硬な態度に、ついに但木が刀に手をかける。
「但木殿ッ!」
(竹俣)
部屋にいた将らしき兵たちがサッと立ち上がり周りを固める動きに出る。
即座に米沢藩士・竹俣が止めに入る。 対照的に刀に顎を乗せて余裕の世羅。
周りを見渡して不利を悟った但木はすぐに刀にかけた手を収め、平伏する。
「おんし等と無駄な話しちょる暇はないわい。 下がれ下がれッ!」
(世羅)
話は終始世羅主導のまま一方的に終わってしまい、但木は悔しさからか顔を歪める。
この顔には仙台藩62万石の大藩のプライドも大きく加味されてると思われる。
「如何な長州の
(略)
図に乗りおってッ」
(但木)
「あれでは話にならぬッ!」
(竹俣)
すいません、(略)部分どうしても聞き取れませんでした。
ともかく腹立たしさの収まらない2人。 そこへもう1人。
「但木殿ッ」
(瀬上)
「お話したい事が‥」
(瀬上)
彼は仙台藩士「瀬上主膳」。 戊辰戦役ではのちに同盟を離反した
【久保田(秋田)藩】へ兵を率いて進撃する。
「これは‥」
(但木)
「世羅修蔵が、薩摩の大山格之助参謀に宛てた、書状で御座る」
(瀬上)
「どうしてこのような物が」
(但木)
「瀬上主膳(せのうえ しゅぜん)」
「世羅が福島藩の要人に、極秘の書状だと
言って託した物を、それがしが預かって参りました」
(瀬上)
奥羽鎮撫総督は会津に加え庄内藩も賊軍指定し、山形方面にも兵を繰り出していたため、
もう1人の参謀である「大山格之助(のちの綱吉)」はこの頃日本海側にいた。
「人の手紙を盗み見るは、恥ずべき事ながら‥」
(但木)
「あの男の事ゆえ、歎願書の事すら報告しておらんのではないかと思います。
彼らの本心が分かれば、会津藩とて、対応の仕方もあろうかと」
(瀬上)
瀬上の言葉にうながされ、但木は竹俣へ目配せしたのち、書状を広げて目を通し始める。
みるみる変わっていく但木の表情。 書状には何が?
「奥羽皆敵」
ここで登場、有名な「奥羽皆敵」の書状。 世羅は東北諸藩を全て敵だと見なしていた。
のらりくらりと言うこと聞かなきゃそうも思うが、これはあまりに軽率では。
「奥羽皆敵、弱国二藩は恐るるに足らずだとッ」
(但木)
「奥羽皆敵ッ!?」
(竹俣)
「初めから会津を潰す気じゃ、しかも弱国二藩とは何事ぞッ!」
(但木)
「それは吾が仙台藩と、米沢藩の事で!」
(瀬上)
仙台は伊達政宗、米沢は上杉謙信を祖に持つ武門の家柄。
これにはさすがに堪忍袋の尾が切れる。
「許せんッ、薩長がその気なら、弱国の手並み見せてくれようかッ」
(但木)
静かな口調ながら、逆に並々ならぬ気迫が感じ取れる但木。
眠れる獅子・仙台藩、ついに維新胎動の波に立つ。
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