白虎隊
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前篇 其の5 B
◆其の五 狂乱の季節
B
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そして、新選組の若者たちにとって、狂乱の夏がやってくる。
京都は祇園祭の季節。 賑やかな人込みを掻き分ける新選組隊士たち。
真剣な表情からは作戦行動中を臭わせ、そのオーラに京都市民はおもわず道を開ける。
裏道に入ったところで隊は、近藤隊と土方隊で二手に分かれる。
近藤隊が目的地正面に到着。
近藤はゆっくりと顔を上げ、その建物の二階を睨み付ける。
「中では、刀を低く使え。 うっかり鴨居に斬り付けると、その隙にやられるぞ」
(近藤)
捕縛ではなく、斬る気満々で隊士に注意を呼びかける近藤。 緊張は高まる。
「よし、行こう」
(近藤)
祭りの喧騒もここは遠く、局長・近藤の合図に、ゆっくりと建物に歩を進める新選組。
その建物には「三条 池田屋」とある。 そう、あの池田屋だ。
長州一派がクーデターで京都を追われ、巻き返しを図る尊攘派が今一度勢力回復のために、
要人襲撃と天皇奪取計画を謀議中との具体的な情報をキャッチ。
京都の治安維持部隊「新選組」は、計画を未然に防ぐため独断で捕縛に討って出る。
ドンドンドン! ドンドンドン!
池田屋内部の様子。 旦那が一人いるだけだ。
「どちら様で御座いましょうか。 今宵は生憎‥
あッ!
」
(池田屋)
戸を開け、無造作に入ってくる近藤を確認した途端、わかりやすい大声を上げる池田屋惣右衛門。
「お客様ァ!お客様ァ!」
(池田屋)
大声で二階に危険を知らせる池田屋。 どうやら謀議はこの建物で行われているようだ。
「御用改めで御座るッ!」
(近藤)
池田屋をどかし、羽織を脱ぎ捨て、戦闘態勢に移行する近藤。
「誰だァ、みんな二階に‥ぉッ‥!」
(浪士)
"シュバ!"
「ぬア!」
(浪士)
近藤は階段を駆け上がりざまに横へ一閃。 たまらず浪士は階段を転げ落ちる。
その浪士を飛び越え、近藤に続いて新選組が一気に階段を駆け上がる。
その先には、情報通り尊攘派の面々が。
それに対峙する新選組は、沖田を先頭に斬り込みを敢行する。
その後ろでは近藤に尊攘派が斬りかかる。 近藤は素早く回避しつつ浪士らしきを殺傷。
これより戦闘は建物全域に及び、場内は乱戦の様相を呈してくる。
この「殺陣」も時代劇の魅力のひとつだ。
こちらは外の様子。
足早に京の町を歩く長州藩・桂小五郎。 突然物陰に身を隠す。
この桂、実は池田屋に向かう途中だったりする。
「(見廻組だ。 なんかあるぞ‥)」と、異変を察知する桂。
桂は席を外してたために難を逃れた。
その頃、池田屋では新選組と尊攘派との戦闘が激化。
尊攘派のボスクラス
「宮部鼎蔵(みやべ ていぞう)」
を発見し、じわじわと追い詰める近藤。
「貴公が宮部だな」
(近藤)
宮部は斬りかかるも、近藤に難なく撥ね退けられ、逃走を図る。
宮部を逃がそうと必死の抵抗を見せる?尊攘派の侍たち。
このままではほんとに逃げられてしまう。
「総司!宮部を逃がすな!」
(近藤)
その宮部、あと一歩で脱出というところまで来ながら、別働隊の土方らに、出入り口付近で捕捉されてしまう。
階段の上からは沖田・近藤が道を塞ぐ。
「総司ィ!やってるなァ!」
(土方)
抜群のタイミングで土方たちの登場。 阿吽の呼吸というやつか。
史実でも、土方隊の到着によって戦局が有利に傾いたとある。
まさしく前門の虎に後門の狼。 宮部は完全に退路を絶たれる。
「肥後藩士!宮部鼎蔵ォ!見ておれー!」
(宮部)
絶体絶命の宮部は捕まるを潔しとせず、持っていた長刀で自刃。
「介錯!」
(沖田)
「武士の情け」が集約されるひとこと。
沖田は、すかさず宮部に介錯を進み出て斬首するも、そのまま咳き込んでその場に座り込んでしまう。
なんと吐血!
「総司!」
(土方)
しかし、戦闘はまだ継続中だ。
「総司!大丈夫か!」
(土方)
沖田は咳き込みながら、頷くことしかできない。
「一匹たりとも逃すなァ!斬れえ!」
(土方)
土方は周りの隊士に命令し、沖田に肩を貸して立ち上がる。
戦闘は二時間に及んだ。
これによって、指導的立場にあった多数の倒幕派の
志士たちが犠牲になり、ために、明治維新が一年は遅れたと言われている。
この池田屋事変で、新選組はその名を
天下に轟かせ、会津藩は、倒幕派の憎しみを一身に受ける事になる。
※外部リンク 図解・池田屋事件
http://www.webvider.com/ikedaya/
表には左兵衛ら公用方の面々が。 その視線の先の新選組は
返り血を浴びており、近寄りがたい雰囲気だ。 一礼をする近藤らに、頷いて返す左兵衛。
その戦闘力を遺憾なく発揮した新選組。 沿道には人がたかる。
「兄者!儂が言った通りだったろ。 近藤たちを残したのは正解だった」
(只三郎)
紆余曲折あり、新選組は江戸へ帰る段取りが出来ていたのだが、近藤・土方らの一派は京都に残留した。
「些かやり過ぎではあるまいかの」
(直右衛門)
「なんの!長州の野望を叩き潰すに、奇麗事は通用せん。
新選組は、吾らの代わりに手を汚してくれたのだ。 こうなったら、徹底的にやる!」
(左兵衛)
かっくいーこと言ってくれる左兵衛。
長州の野望を阻止するために、決意を新たに固める。
更に、その一ヵ月後、巻き返しを図る長州勢と、蛤御門で激突。
クーデター後の数々の朝廷工作も失敗し、挙げ句の果てに【池田屋事件】で同志を殺された長州藩は、
真木和泉を含む藩内の強硬派の主導によって挙兵。 海路大阪へ上陸し、京へ向かって進撃を開始する。
隙を突いて長州藩士
「久坂玄瑞(劇中未登場)」
が御所に参入し、公卿を説得しようとする強行突破作戦だ。
これにより蛤御門付近は、市中一番の激戦区となる。 【蛤御門の変 = 禁門の変】
長州軍は奮戦するも、会津・薩摩連合軍がなんとかこれを退ける。
この戦闘により、京都市中は3日3晩燃え続けたとのこと。
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この辺、端折り過ぎなので、同シリーズの第五弾「奇兵隊」を参照。
過去フィルムだが「風間・容保」と「夏八木・近藤」らが、この「白虎隊」より応援出演。(悪く言えば使いまわし)
「頭脳明晰・人情希薄の藩風」と噂された、長州藩からの視点で幕末を語る貴重な作品。
時代劇スペシャル第五弾
奇兵隊
出演:松平健/中村雅俊/片岡鶴太郎/池上季実子
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↑悪ノリした。
長州軍は蛤御門での劣勢を立て直せず、たまらず京を離脱、天王山方面へと敗走する。
蛤御門からの追撃戦、【天王山の戦い】へと移行。
その激しい戦闘のさなか、なんと左兵衛が敵の銃弾を浴びてしまう。
「野村さん!」
(近藤)
「野村さん!」
(土方)
近藤・土方は左兵衛に駆け寄る。
「騒ぎが済んだら‥ 会津へ来ないか‥」
(左兵衛)
左兵衛はそこまで考えてくれていた。
「会津へ‥」
(近藤)
その言葉に近藤と土方は目を合わせる。
「ああ‥ 会津は、良いぞ‥ 人情も厚いし、酒も美味い‥
‥日新館で、若い連中を鍛‥え‥きた‥」
(左兵衛)
「野村さん!」
(土方)
ここで、会津藩公用方・野村左兵衛、絶命。
長州との戦いがまだまだ困難を極めようという時に、会津は優秀な人材を失った。
「しっかりしてくれ‥俺たちはあんただけが頼りなんだ!
頼む‥しっかりしてくれ‥ しっかりしてくれえ!」
(土方)
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史実では禁門の変の3年後に病没。 享年53。
新選組の3人は、左兵衛の墓標に詩を贈る。 読めない。
主人公の一族である井上家に、ついに犠牲者が出てしまった。
御所に弓を引いたとされた長州は正式に「朝敵」となり、朝廷は幕府に
「長州を懲らしめろ」と勅許を与え、征討に乗り出す。 【第一次幕長戦争】
その間、長州では保守(俗論)派が藩内の実権を掌握し、【蛤御門の変】の首謀者たる益田右衛門介ら3家老は切腹、
戦わず幕府軍に降伏する。 これ以後長州は表立った行動が影を潜め、公武合体派はその地位を磐石なものとした。
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